esquisses/鴫澤初音
 
 鍵を持っていたんだよね、君は


 閉じた空に背を向けて、僕らは山へ登っていく
 道筋を辿って、汗をぬぐって
 ひたすら 
 足の上下運動を繰り返す

 ねえ 君は
 上下運動なんて 嫌らしいっていうんだろう きっと
 
 とりもせず

 見つめて
 見つめて

 空が
 閉じていく 暗く 星々が投げかける瞬きにも
 気づけなくて

 ただ動かしていた心が
 
 満たされていたかった



 なぜ君は 私がここへ書くのか
 わからないと 思うだろう きっと

 君にはわからないだろう 

 指からこぼれ落ちていくものがたくさん
 私
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