日常/草野春心
 


  吸えもしない煙草を吸ったり
  知りもしない話題にうなづく
  そんな歪んだ習慣の集積が僕らの日常



  何かを食べるのが好きで
  歌ったり眠ったりしていればそれで幸せ
  理性だの感情だのいちいち対立させなくたって
  ちゃんと僕は僕の手なずけ方を熟知している



  きょうも街は迷惑の掃き溜めみたいな場所で
  奪われたものは何なのか誰にもわからない
  そしてもちろん知らず知らずのうちに奪っている
  あれを……それを……これを……



  君は知っているかな
  僕が君を愛していたこと
  日常から詩をすくい出すことができると
  僕が本気で信じていたこと
  君は知っているのかな



  これは詩なのかって考えることは
  これが日常なのかどうか考えるのと似ている
  君の存在が僕の空論を包み込んでくれるから
  僕は死ぬまでは生きていけそうだよ


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