雲の上のひと/恋月 ぴの
 
る小学校の校庭が見えてきた

あれって、わたしの母校なのかな

ありったけの生徒が小さな校庭に集まって
こっちに向って手を振っている
やらせでも何でも涙が出るほど嬉しくなったよ

泣いたらしょっぱい霙が降ったりして

さっきまで見え隠れしていた富士山の頂きも
今はもうすっかりと雲間に隠れてしまい
これで撮影終了だよねとスタッフのいた方向を見やれば
そこには誰の姿も無く何処までも雲が拡がっているばかり

そうだったよね、
ここからはひとりで歩いて行くんだよね

群青色に輝く空のずうっと向うまで
ひとりきりの旅がはじまる

今さら弱音なんか吐いたりしない
誰かが何処かでわたしの名前を呼んでくれるから

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