雲の上のひと/恋月 ぴの
 
いくら落ち目のわたしだからって
何でこんな仕事しなきゃいけないのかな
数人のテレビクルーを引き連れて
どれだけ歩いてきたんだろう

雲の上を歩かされるなんて思ってもみなかった

富士山の八合目あたりで
重く立ち込めた厚い雲にはしごをかけ
よっこらしょとよじ登った雲の上

ふわふわに膝まですっぽりと埋まってしまい
歩きにくいったらありゃしない

しかも雲の上まで迷い込んだ渡り鳥を捕らえたら
「とったどぉ!」だなんて
売れないタレントの真似までさせられた

雲の切れ間からは地上の様子が良く見える

スタッフの合図で下を覗くと蜜柑畑が広がっていて
見覚えのある小
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