世界のどこかで叫ぶ/佐々木妖精
 
怒っている

ほったて小屋の前で
巣箱なんか作りやがってと
空に
怒っている

怒っている
俺の仕事が
詩人で
せっかく
命がけで
産んできたのに
何の恨みがあって
背中から
ほっぺたを這いまわり
頭頂に
オブジェを添え
祈るのかと
怒っている

彼の言葉が
あまりにもしぶき
打ち寄せるので
通行人として
まがりなりにも
はしくれとして
彼に
お前ら
と呼ばれ
私のことなんか
見てすらいない
くせに

口を開こうと
するのだが
彼の舌と
かぶさってしまうため
何も言わないまま
通り過ぎるという役割を
演じきって

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