六月のギター/草野春心
 


  庇を打つ雨音
  だれもいない夕暮れの本屋
  庇を打つ雨音
  会話はまるで騙し絵のよう
  君は小さく笑っていた
  幸せは哀しみを待っていた



  いくつかの書棚と
  日焼けしきった夢の匂い
  床に散らばった永遠とか虚無とか
  その一握りを
  古惚けた天秤に
  君のふたつの手のひらに



  みんな死んでしまうのよ
  ママもパパも先生も
  人形さんも蜜柑の木もお金も死ぬのよ
  言葉をちぎっては捨て
  捨てては拾いながら君は
  君自身の重みを測ろうとしていた



  庇を打つ雨音
  埃をかぶった時
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