ウォーター・フロント〜幻想曲〜/
渡 ひろこ
おくれ毛を撫でながら
ふくみ笑いで通りすぎる
水先案内人は
とうに化石となって泥の中で眠り
行き場を失った小舟は
いくつもの白い手に弄ばれる
混沌としたゆらぎ
扇形にしずむ
波のはざまに
とろとろ満ちてくる旋律
うら返った意識に
拍動を送りこむ音の重なり…
幻想曲が降りてきた
ふと 目を開けると
眼下の夜景のパノラマに
五線譜がひろがる
ガラス越しに映る暗い水面(みなも)は
それでも私を誘っている
戻る
編
削
Point
(9)