十九首・・・じゅうくしょう・・・/佐々宝砂
十九の生首がの、あったと申すよ。
小さな川のほとりにぢゃ。
昔お前がよく焼き芋を買った店の向かいぢゃ。
あのころお前はしじゅう鼻の具合を悪くしての、
あの店の裏手の病院に通った。
雑貨を並べた店先にの、
焼き芋を焼く大きな窯があったの。
覚えておるか。
そうか、覚えておるか。
あの店の前にの、
寺と塚があったのだ。
それが首塚ぢゃ。
今もある。
大きな塚一つと小さな塚が十八ある。
覚えておる人は覚えておる。
十九の首のことを、な。
あれはな、戦国の世の、そのまたさきの世のことぢゃ。
無論わしも生まれてはおらなんだ。
この川のほとり、あの塚の場所に、
東国から将
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