ガラスの風景/いねむり猫
 
壁に埋め込まれた青のガラス球が
深く次元を縫いとめて 
どこか知らぬ土地の街角を写している

白い壁に埋め込まれた青ガラスの半球は
日の光を浴びることができない
でも これ以上何処へも転がらない
内緒話のような後ろめたさと安堵

透明なガラスの器の中に たくさん盛られたビー球たち
ひしめき合う色彩と光と きっと冷たい
隣り合うよそよそしさ 

すりガラスを通して届く 木陰と 葉の間を潜り抜けた光の瞬き
触れていなくても思い出せる ざらざらの乱反射

激しい夕立の中にひらめく雷光を 
母の手を握りながら眺めていた大きなガラス窓

山小屋で教わった小さな滝の
清冽な水しぶきを浴びた腕時計の輝き

夏休みのガラス工房 
高熱の中の なまめかしいオレンジのしたたり
ゆがんでいるけどお気に入りのグラスに
牛乳をあふれるすれすれまで注いでから飲む習慣

流れる波のようなドレープに取り巻かれた花瓶
あなたが好きだったラベンダーの
濃い紫があふれているリビング

ガラスに封じられた
光たちの記憶



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