それが何だったかもうわからない/カンチェルスキス
 
 空を飛びたいと憧れた人も 
 
  どこかにちゃんと着地したいと思ってる あの歩道橋を越えたところで着地 もううんざりだから

  声が声で消される静寂を怖れた蛸壺の中で罵り合って 泣いてるんだけど涙顔に見えない

  古い辞書に載ってた言葉をメモした紙の切れ端が 乾いた空気に擦り切れて燃える 

  あたたかいものに抱かれるような言葉 倒れた人も甦るかもしれない言葉

  どこに居てもちゃんと着地できて歩けるような
 
  墜落する途中の飛行機の中で思わずにはいられないような

  手探りで探してももう発見されない発掘されない 擦り切れて燃えた







戻る   Point(1)