くすぶる/佐々木妖精
ホームレスが灰皿に
深々と頭を下げている
制服の女性が後ろで睨みつけている
歩道に頬杖を付き
Yシャツに血が滲む
彼女の脚の下
フォーカスをぼかし
そこいら中に降ってくる
皮のアイスピックを眺めている
150度後方で警官がジャラジャラと手錠を弄ぶ
あらゆる人の中で戦火がくすぶっている
避けようと這えば這うほど突き刺さり
彼等が衝突を避けていると知る
点字ブロックは愛を口にせず
戦争を知らない
愛を知り得るものだけが愛すべき人を殺す
愛を知る者が
だけが私を避けていくので
立ち上がると血が袖口から杖を汚し
相応のベッドを求めて転がる
中華まんの臭いがす
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