機会者/狩心
一人の犠牲で
百万人が救われて
百万人の犠牲で
一人の天才が生まれた
口だけでは正確に
的を射る事が出来なかったので
足を使って的をずらした
火が水の中に落ちた
目蓋を閉じれば突然光は消える
睫毛の重さも忘れて
睫毛は触角として外界を告げる
目蓋の裏側に小さな振動と
白と黒がはたはたと交互に入れ替わる
手を叩く為に物を捨てた
事を知らせる為に服を脱いだ
そこから
空白が始まって歌を告げる
歌なんていらない
ひとしきりに泣いた
あめふらしの夜
水中での呼吸法を自慢げに話した
崖っ淵の夜空
覗き込んだ穴に
しゃぼん玉が一つ
渇いた喉に
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