朱の珠へ/
雨宮 之人
空をオレンジに染め上げる夕暮れ
長く伸びた影
久しぶりに笑った僕の
それはまったく笑っていなかった
夕焼けに目を
目を、射られて
降る朱(あけ)に手を
手を、伸ばした
あと何ミリかで目覚める明日のその手触りを
そのぬくもりを
この手のひらが覚えている
熱い
熱い、
流れるその血を
僕は
感じて
感じて、
そして寂しい
紫の暮れ空
たくさんのぬくもりが
こぼれ落ちたこの手のひらから
朱の珠(たま)がひとつ
今日もひとつこぼれ落ちて
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