オープニング/たもつ
 
ら落ちていくのでしょうか」太郎さんの質問
  「本当にきれいなのはそれを見ているわたしたちなのです」
  Aもまた体のいたることろに水分を含んでいる

太郎さんの生家の近くには牛舎があった
まるで誰かの余談のように
複数頭の牛が仲良く並ぶ日もあった
そして他の誰かの余談のように突然牛舎は壊され
牛たちは跡形もなくなった
Aが省略から開放され「教師のAさん(仮称)」を取り戻し
管制塔を書き終えたころ
滑走路を一人歩く太郎さんの最後の姿が目撃された
後には空港で埋め尽くされたノートが残され
細長くどこまでも
オープニングだけが続く

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