ビールの泡/柚木
 
ビールのね 泡だけを飲めばいいんだよ

泡だけならお酒じゃないんだよ


子どもという妙な枠組みの中にいる僕たちの
小さな小さな世界の中で
小さな小さなグループの
リーダーであるけんちゃんは言った


これなら 俺達だってお酒がのめるんだ

大人なんだぜ


泡ならお酒じゃない
お酒を飲める
そこに矛盾はあるのに
僕らはなんだかすごいことに
気づいたような気がしていた


振ればな 泡が増えるんだ

コーラと一緒なんだよ


にやっと笑っていったのは
この缶ビールを持ってきたしんやだった
僕らは夢中になって
缶を振った


缶のプルタブに指をかける


ぷしゅっと言う音と共に
一斉に顔面を泡だらけにした僕たちは
確かに大人になったと思う


それはとてもとても苦かった
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