「既視感」/菊尾
 
窒息目的の答えだから
踏み千切って
浅海色の空へ投げ散らかした
嘆くことにも好くことにも疲れてしまった私は
澱んで溜まって
イタズラに腕を掻く

  6
 5
4

名前を知っていた
誰かも分かっていた

3
 2
  1

記憶が透けていく感覚
1秒1秒確かな重さで私が奪われていく


馴染まない一人分の空間で
慰める事ができるのは私自身の指先で
つまらない科白ばかり浮かぶ日は決まって雨粒が落ちてくる
水滴が流れながら監視するこの部屋から響くのは
狂いない秒針と小さく乱れる呼吸音
それと
浴槽から溢れる水の音
外側も内側も水で溢れている


懐かしい人
けれど残酷さを置いていく人
良い様に改竄されていく光景
どうせ夢を見せるなら
最後まで続けて下さい


蛇口を締める
浴室を出て窓の外を眺める
部屋の明かりを消す
窓に私が映る
廊下には濡れた足跡が貼り付いている
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