心臓をたもつ為の、遺された/石田 圭太
 
(きみは近く
 足元から古い崖が、伸び悩み

 きみはすぐ下のことが分かる)

 ひどく、近く
 じっとしている
 長いこと
 息を奪われて、呑みこんだ夜
 ふさわしい音はながれて
 口ずさんだ
 無言歌
 きみは近く
 足元から古い崖が、伸び悩み
 きみはすぐ下のことが分かる
 音よりも歌にある、きみは
 音よりも歌に、ある
 きみは近く、より近く
 あるきみは音よりも近く、歌に19年そして
 息のようにしてながれている

 一体いつから(どこから)ぼくを眺めていたのか、きみは
 ゆるやかに、音階のずれた日溜りの(たえず)過去について覚え
(た
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