摩周湖/池中茉莉花
 
その日
あきらめきれない ふたりは

しびれをきらした 家族たちから 
置いてきぼりにされて
先のみえない白い世界に
佇んでいた

握りしめたじいちゃんの
手から伝わる熱だけが
ただひとつの光だった

深い 深い 霧と
気の遠くなるよな 静寂が
わたしを包み込んでいた

ふたりには 確信があった
必ず 霧は晴れると

       思えば 似たもの同士だったのね
       じいちゃんと わたしは

       こめかみの 同じところに 青筋が 浮き出てる
       これが いつも 悪さをするんだ

       「愛しているよ」と言おうと
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