今はまだ相応しくない/松本 卓也
窓ガラスが曇りすぎていて
朝の陽射しが眩しすぎて
景色がよく見えない
平坦な道のはずだから
何処にも隠れる場所は無く
見覚えのある標識を過ぎて
がむしゃらに向かっていれば
いずれ辿り着くはずなのに
いつか帰り着くはずなのに
ペットボトルが散乱した
一人暮らしの静かな部屋
ただいまと告げる事はない
疲れ果てベットに沈み込む
ただそれだけの空間で
誰かが一人が好きなんだなと告げる
誰かが寂しがり屋なのねと囁く
そのどちらも的を射ていて
同時に的外れでもある
『明けましておめでとう』
・・・何が?
瞬く間だけの温もりとか
引き摺るばかりの別れとか
繰り返し誤りながら
尽きる時に近づいていくだけ
繋げるのはただの義務
本能ゆえの惰性で生き延び
また無駄に年を喰うばかり
だけど一つだけ願う
どうか今年こそ
生きていく糧を作れますように
上辺だけの時候の挨拶ではない
本心からの祝いを告げるのは
その後で十分だろう?
戻る 編 削 Point(1)