「夜道」/菊尾
塀をよじ登ったあの頃
見上げた空は高くて弓なりで
靴紐が解けても気にせずに騒いでいた
夜は嫌いでつまらなかったから
下らないこと考えて過ごしていた
虫の鳴き声にばかり耳を澄まして
寂しくなったのは西日の濃さに
周りより自身の煩わしさに
なんだか急に帰りたくなる
立ちすくんで青白い月からの視線があり
こんな気持ちにも
耐えられていた事を思い出していた
これは覚えておきたい
あれは時効だから流しに行こう
計画的に打算的に意味ありげにしながらも
価値を失って廃れていくのです
すっかり落ち込む僕に
あなたが「下らない」と一蹴するから
まだ立っていられる
繰り返される馬鹿馬鹿しさに
「許容範囲内です」と答えるあなたに
夜中の住宅街の静けさの中で
僕は次に言う言葉を
アスファルトに落書きしてあなたに伝えるのです
満月と目が合って
寄り道しながら帰る夜の道
草葉の陰では夏を謳う虫の声
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