水子ノ声 〜法隆寺の小道にて〜  /服部 剛
 
法隆寺を後にして
大和の日も沈む夜 

土塀のつづく石畳の道 
街灯の灯る曲がり角に 
顔の無い水子の仏像が 
肩を並べて待っていた 

しゃがんで 
幾人もの丸石の顔等に 
手を合わす 

立ち上がり 
後ろ向きで歩きながら 
名残惜しく 

遠ざかる小さい姿 
顔の無い丸石等が 
無数の紅葉の手を 
旅人のぼくに振り 
何かさけんでいる 

自らの足音が響く 
人気無い石畳の道 

街灯の下
音も無く 
響き渡る 

声 







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