連絡船/たけ いたけ
 
「知らない世界で言葉が鳴っている」

そう思いながら重たく白い窓を開けた
風が吹き込んで外の空気と一緒に声が届く
どうやら階下では五六人の少年少女達がふざけ合っている
それぞれに口を機敏に動かしては
言葉を伝え合っていた

丸い感情を一つ一つ積み上げていたら
その一つ一つの内側では対流があることに気付く
とても柔らかな姿が
目から手の平からあばら骨から
血へと注がれていく
それは心臓へと連動し
続いて連動するはずの子宮
そうしてその子宮がないことを悟る

立ち上がって音楽を鳴らすと
秘密めいた交信が始まり
遠くで言葉が鳴りだす
水平線の上の連絡船のように
夜空に鳴る雷のように

それらのささやかさは僕の手前で落下する

また窓辺を振り返ると
一匹の蝶が飛んでいて
羽の模様をヒラヒラさせて飛んでいた
ゆっくりと
ヒラヒラ ヒラヒラ



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