それぞれの名前で、波にとけても/たりぽん(大理 奔)
 
  言葉を投げ合うほどに
  違うものだと気がつく
  砂丘の砂、そのひとつひとつが
  自由な砂の本性で
  名前が足りないから
  同じものだと思いこむ
  それはかなしいことだ

あめは雪がとけて降るというのに
ゆきは雨が凍って降ると
信じていたあの日のように
確かめ合うたびに
違うものだと気がつき
その体温で何かがとけて
ほほをつたったり
つたわらなかったりする

  雲は水素酸素水素だ
  雨も水素酸素水素だ
  僕だけの秘密じゃなく
  秘密にしているから
  だれもそう叫ばない

知っているのに
言わないことを
常識と名付けてみる

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