鉛筆を回す時/木屋 亞万
 
経験のない事を書くべきでない
本当に理解していないものを
書いてはいけない
書けるはずがない
と思うから
経験と理解の引き出しを探ってみる

実際に体験してきた事など
人より少ないくらいなのに
骨身に迫る日常の切り口を
必死になって作ろうとして

ずっと探し続けていた
感覚に迫る文字群を
この手で拾いあげるべく
唯一無二の生々しさを求めて
そうぞうの海へもぐりこんだ

濃縮還元された入口の素を
見つけさえすれば
広がるかもしれない
幻想世界を夢見て

経験を努力を夢を
もってすれば
届くだろうか
いつか
言葉は降りてくるのか
平らで大きな雲の下を
元気に小判鮫している
光る言葉の群れ達は
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