夕立売/鴫澤初音
日が暮れてきた。2人はと言うと途方に暮れてきた。
そこに兎が通り過ぎた。
夕立、夕立ー、1回5,000円。
古びた手押し車には子供用のガラガラおもちゃがたくさんついていた。
夕日の光の中でそれらは色とりどりにきらめき、
兎の白い毛皮にその残照を映しこんでいた。
タケシは手を上げて兎を呼び止めた。
手元にそれほど金があるわけではない。
だけど、夕立売の兎など、聞いたことが無い。
彼らは見かけこそ老いているけれども、
心は好奇心に満ちているのであった。
タケシから5,000円を受け取ると、兎はまた手押し車を押してガラガラと
高校の角を曲がって、消えてしまった。
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