叫ぶ/Utakata
僕はその目盛り分この場所から外れてしまいそうな気がして
窓に目をやる
押し付けられた掌の形が
流れる水滴で次第に崩れていく
適切な言葉を掛けるべき誰かが居て然るべきだった
適切な言葉に決して触れられないだけの話だった
例えばそれは
夜が朝に変わる境目
雨が凍りつく境目
肺から流れ出た空気が
声に変わるまでの境目
声と
声にならずに零れ落ちる沈黙たちの間の境目
そして秒針は規則正しく
彼らを
(比喩の向けられるべきだった物事は もう既に失われている)
そのとき電話の画面が死ぬ
可能性だけが手付かずのまま保たれている
夜が朝になるまでにかかる
光の速さはどのくらいだ
夜明け前
僕は境い目に立つ
全ての可能性が与えられて
全ての選択肢が失われた世界の境目に立つ
最後の瞬間
僕は薄闇の中で堪え切れずに叫ぶ
狂った時計が午前五時を告げた
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