赤い風船/木屋 亞万
風が通り抜ける
身体を行き過ぎる
遠く西の方からやってきた
少し乾いて冷たくなっている
涙も雪も枯れてしまう
心臓を破く坂を越えて
壁のまえ足踏みするようにつむじ風
落ち葉を浮かべてすぐに手放す
私も一緒に巻き込んで欲しい
ひとしきり遊び回った後に
どこか遠く東の海へ連れていって
厚手のコートがめくられる
薄い白雲の隙間から濃紺の海が
冷たい水を南へ押し流していく
雲より速く東へ吹き抜ける
目の前から来る暖かい風に踏まれ
海面すれすれを飛沫を挙げて駆ける
赤いコートはまだ濡れていない
ついには海に弾けて沈んでいく
白い泡が私の中から上っていく
底
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