離れる/木立 悟
望まれない音の色とかたちが
夜明けのほうから降りおりる
まぶたの上のまぶたのかたち
ほのかに目覚めをさえぎるかたち
響きのなかに子らの手があり
母の行方をさがしている
まばたきの音
握った指をひらく音
とどけることができず
しまったままでいる声に
ふいに混じり ふくらむもの
ひらき 握り
ひらく手のひら
肩から背 肩から背
跡を残して流れ去る
遠いはずのない 遠いしるし
午後の夢さえ 遠いしるし
雨が冷え
空ばかりが白い雪の日の
つづくことのないひと吹きの唱
はざまを駆けるひとつきりの唱
見えることの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)