こんな夜は凶暴になる、/榊 慧
だから、そっちへ行ってもいいか。
俺はむごたらしい目をしていた。冷蔵庫のブウウウンンという低い振動音が足もとを這いずっていた。でないと俺はどうにかなりそうだ、おまえが俺を止めろよ。いびつな笑顔だと思った。また勝手に何かを苦しんでいる。俺は目を細めた。開け放した扉の前に立つ俺の背中には死にたくなるほどの鮮やかな月があった。それはてらてらと光って画期的な色合いで浮かんでいて、あまりにも巨大だ。大きすぎて欠損してしまう。
背筋が振動で温まる。なまぬるい、体温のような空気に軽い吐き気がこみあげる。夜泣のような風が喚いてびっしりと文字の詰ったノートのページを静かに乱した。手
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