嘘/アンテ
 

見慣れた柿の木が葉を揺らしている
良くなったのね
声がして振り返ると
まゆこさんが
じっとあたしを見ていた
はい
大丈夫です
左手首に巻いた包帯を
わざと大きく振り回して
まゆこさんの横に座ると
クッションの上でおしりが跳ねた

誰かにかまってほしかった
わけじゃない
充足感
のためでもない
なにかをするよりも
言葉で過去を作ってしまう方が
失敗も落胆もない
たぶん
最初のうちは
できないことだけ
作り話で補っていたのだろう
自分でなにかをするより
記憶を作る方が
手軽で
騙すつもりはなく
傷つけるためでもなかった
だから
みんなが怒る
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