深夜、記憶を探る旅/ゆるこ
 
 
 
午前三時
おれんじ色の世界が始まる僅か前
張り替えたましろな障子に囲まれ
新しい青臭い畳の上で
蛍光灯から垂れた紐の先を
猫のように見つめている
 
断片的な映像が
時折ノイズと混ざり、生まれ
沸き上がらない感情の波を
引き出しに詰め始めて、溶ける
 
 
自分をまだ 知らないころ
高速道路を灰色で塗り潰し
雨音を子守唄とし
なんの衝動もない まま
新品のさらしにくるまれながら
安心の世界で眠る
 
 
ゆらゆらと
紐は揺れ、
突き動かされる嘘の思春期に
溜め息すらつかず、
 
 
高鳴る心臓を尻目に
脳は静かに老化を始める
全て 全て、忘れる前に。
上ついた瞳で世界を閉じた
 
 
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