この世界を離れて ★/atsuchan69
ているんだがね」
ぶどう酒をのみ、座長が父ちゃんに言った。
「おこころづかい、ありがとうございます」
「わしらは家族みたいなもんさ。困ったときはいつも助けあい、協力する。病気になっても放っておかないし、めんどうもみる。だいいち旅まわりはしてもじつはちゃんと住むところがあるのだ。そこは海べの村だが、一年じゅうあたたかで食べものもうまい」
「さかなつりもできるわ」
まだまだ子どもらしさのぬけていない、にきび顔の娘がそう言った。
「座長はん、どないですか? そりゃあ旅の生活はきびしいでっしゃろ」
母ちゃんはもうさっそくこの先を見すえた話し方をした。
「たしかに。しかし、しょせん大衆
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