絵/アンテ
 
うとすると
一日一回だよ
係員に止められた
目がくりっとした男の子だった
それきっと
ツキくんよ
成美さんは自信ありげにうなずいた
本当におとうさんなの
聞くのを躊躇っていると
そのうち本人に逢えるわ
といなされた

退院の日
ようやく完成した手作り童話は
泣きたくなるくらい幼稚な絵
だったけれど
うれしい
と正直に言えた
お医者さんと看護婦さんにお礼を言って
病院を後にして
近くのバス停で
ちょうど来たバスに乗る
ねえ 成美さん
あたしから話しかけたのは
はじめてかもしれない
ドロップの缶
宝物でしょう
成美さんはうなずいて
見覚えのある缶をバッグから出して
手渡してくれた
振ると
確かな手ごたえがする
黒猫の名前
と言いかけた言葉を呑み込む
窓枠のねじが
一本欠けている

「いやねえ、思い出し笑いって」

スケッチブックの入ったかばんを
しっかりと抱きしめる
景色が流れていく



                          連詩 観覧車



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