絵/アンテ
 

成美さんは花びんに花を生けながら
でもまあ
命は失わずにすんだじゃない
と笑った
あたしも
そうねえと
心から笑えた

観覧車の童話
のことを話すと
成美さんはきょとんとして
おかあさんらしいと笑った
そんな童話は出版されていないらしい
催促されて
一行ずつ思い出して
話すのを
書きとめている横顔は
たしかにまゆこさんの娘だ
初対面なのに
古い知り合いのように向き合える
のが不思議に感じない
まゆこさんの代わりに
アパートにたどり着き
意識を失っていたあたしを発見して
救急車を呼んでくれた
時のことを
詳しく話してくれながら
時々黙り込んで
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