原風景/九谷夏紀
誰が持っているんだろう
欲しい言葉やこころ
いつもどこかで期待している
言葉は言葉だけに乗っているんじゃなくて
瞳や腕や筋肉や呼吸から発せられて届いたときは
涙ぐむほどで
あなたの言葉は
前触れもなく
冷たい手が胸の下あたりに触れたときのように
知らない私を見つける
どこか人間離れしていた
あなたの部屋に置かれたたくさんの外国の仏像のように
じっとしたまま見透かすように操る
この距離が必要ですか
あなたにとってはあくまでも女ありきの女でしかないのが
この不安感の理由
きっと一生溶け合えない、そこが寂しい
あの部屋が好きだった
そこにいるだけでほっとし
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