1/fのゆらぎ/渡 ひろこ
夜をかさねた底で
かすかに聴こえてくるのは
淡くほどける
ひとしずくの
きらめくゆらぎ
一定のリズムを打つ心拍
冷酷に刻まれる一秒
整然とした規則の中で
とぎすまされた直角は
ゆるり とほほえむ
気づかれぬように
ふっとゆるんだ透き間から
とろとろ こぼれ出た
鬱の温度が
藍色から水色に変わる
1/fの小刻みな波は
異なる世界へのつながりか
乾いた着信音のにぎわいで
白日には逃げてしまう
真四角な理(ことわり)の
うるんだ想いが知りたくて
今夜もまた
正しい不規則に
耳を澄ます
戻る 編 削 Point(24)