「旧日」/菊尾
今日は綺麗な日
鳥だって飛ぶのを止めて見惚れてしまう
見たこともない何重もの輪が溢れて
君も僕も体が白く包まれていく途中
そんな事だって過去になるけど
明日までの距離はもう無いみたい
あれとこれって切り揃えて並べたい
銀色と冷たい感触
君はテーブルの上を整えている
僕は読みかけの本を書棚に収める
どこに居ても
声は無力で飲み込まれるだけだから
口を開かず、そつなく動く
もうすぐ訪れると分かっているから
当たり前の事を意識せず
こなしていくだけ
透けていく食卓
食器の音も聞こえない
椅子を引いて水を汲みに行く
水滴が手についたような気がした
座っている君の髪が半分ぐらいにまで透けている
全ての事に逆らってどこまでも行きたいね
叶わない日々を夢見ながら
部屋は満たされていく
その世界での呼吸の仕方を知らない僕らは
「さようなら」と言って
手を繋いだ
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