解放されたからだ/佐々木妖精
 
ハンガーが足りないため
シャツとセーターを7枚着込む



窮屈な身体をもたれ自室の戸を開け
間取りを読み
鏡だけの部屋で鏡が
なぜ
縦にあと3センチ長くないのかを
考える

天井が3センチ低いからだ

見上げた先で身をかがめ
覗き込む彼と目が合う



インターフォンが幾重も折り合って鳴る
こだまする
一歩も動けないのは
彼がどんな対応をするのか監視してて
動けない
からだ

出口を見つけるため
ピストルを打ったら反動でぶっ飛んでしまい
服だった塵と
ぶち破ったガラスが大気となり
ビー玉の雨が舞う
銃口はどこへ向いていたのか月で考える
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