妙な味のする指舐め/鴫澤初音
 
 僕を愛せないで いた ずっと

 そう




 僕は予兆に満ちた海を見ている 僕等が指で触った未来は直ぐに
 
 過去になってしまうのは 何故 だろうか  あれほど

 笑い合った日々がもう 思い出せずにいる

 通りすぎていく 未来が 還ってこないまま 歩き出しては

 泣いて 霞んでいく光景を 見えない眼で 探していた それは

 君の 姿  忘れていて 忘れていない もの

 
 空が青かった 単純で汚れのないもの

 美しかった 光が指の隙間を通りぬけていった いつか
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