『和氏の壁』の逸話のように/松本 卓也
ない者には決して見えない
与えられた言葉からだけしか
己すら語れないのならば
百万の文言を尽くしても
形など創れるものだろうか
路傍に転がる小石を拾い
刻まれた言葉を詠み上げれば
偉い学者に付けられた名前も
収集家が積み上げる札束も
何の意味がない事を知るだろう
無造作に掴み取り握り締め
刻み込み放り投げまた拾う
繰り返し積み重ねられた質量に
お墨付きなど必要ない
纏わりつく電飾の横で
静かに放つ輝きが
君等の目には映るだろうか
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