それぞれのクリスマスナイト/恋月 ぴの
ふたりで仲良くはしゃぎながら
飾り付けなんかして
これが幸せなのかなと思ってみたりした
去年のクリスマスナイト
今年も飾ってみようと
押し入れの奥から引っ張り出してはみたけれど
背高のっぽのツリーのてっぺんまで
わたしひとりじゃ背伸びしたって届かない
ちょっと崩れた化粧箱のすき間から
赤くて丸い玉のような飾り
がひとつ
ベッドの足の傍に落ちていた
この飾りだったかな
あなたは鼻の前に左手であてがうと
「おれってトナカイ!」
思わず引いてしまうようなギャグしてた
金色の吊り紐をつまんで
ほのかな月明かりに透かしてみると
忘れようとしても忘れられない
あなたの笑顔が鈍い輝きの向う側に映る
ロックフェラーセンターに負けない
大きなツリーを飾ろうねだなんて
いつものうそと知ってはいても
嬉しさに目を潤ませたりした
胸に抱いてから思い出と戻した
赤くて丸い玉のような飾り
箱のなかで静かに眠るツリーを眺め
これも幸せなのかなと思ってみたりする
ひとりきりのクリスマスナイト
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