鍵/アンテ
重い空気が流れ出す
電子音
が心拍と重なる
カーテンがなかば開いた窓
の向こう側
月がとても大きく見える
観覧車の箱から見た最後の空も
こんな風だった
ベッドのシーツを手のひらでなでる
たくさん
謝らなければ
靴を脱いで
トレーニングウエアを脱いで
下着を脱いで
裸になる
ベッドに横たわる
鼓動がゆっくりと大きくなって
気持ちそのものになる
涙があふれる
大丈夫
涙がこぼれ落ちる
大丈夫
あたしの名前は
まぶしい光
白い天井
だとわかるまで時間がかかった
細い指があたしの髪をなでる
「おかえり」
はじめて聞く声
うなずく
喉が渇いて
うまく声が出せない
「おかえり、リエさん」
涙ぐんでいる
表情
ドロップの缶の写真と同じ
面影
名前を呼んでみる
にぎりしめていた指を
ゆっくりと開く
確かに鍵がある
成美さんは何度もうなずいて
そして
また
おかえり
と言ってくれた
連詩 観覧車
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