幸せが飽和してゆく/ウデラコウ
あの日の君は それはたいそう 笑顔で
真冬だというのに
黒いシャツ1枚で立っていた
いや〜 寒いですね よく考えたら12月でしたね
って へらへら笑って言うから そのときわたしは
この人は絶対に アホだと 確信した
あれから 何度か季節が変わって 一巡りして
去年編んであげた黒いマフラーを大事そうに使う横で
わたしは それに合う 黒い帽子を編んでいる
たぶんきっと 今年も クリスマスには間に合わない
それでも 君は にこやかにわらって
僕が 一足早くプレゼントを渡したから
君は 一足遅れてプレゼントをくれるのでいいじゃないかと
言うのだろう
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