喪失/秋桜
 
 
無くしたのです
何を無くしたのかは
覚えていないけれど

 
 
無くしたのです
確かに私は無くしたのです

 
 
無くしたのです
無くしたものは判らないけれど
記憶と一緒に無くしたのです
 
 

 
それをたいせつにしたかった
そんな記憶すら今はあやふやで
恐ろしいのです
 


 
無くしたものは知らないけれど
私の過去を連れて
手の届かないところに旅立ったようです
 
 


 
砂浜にびっしり書いた
君への手紙が
静かに波に浚われました

 
少女が握った風船が
悪戯な風によって
空の彼方へ旅立ちました

 
私の記憶は
壊れた砂時計のように
さらさらと流れ出しています



今も刻々と


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