その優しさ/佐々木妖精
 
1年前の物干し竿がボキボキ折れたため

線香立てに刺し

バスタオルを半年前の乾麺にかけると

「向いてないですから」

一瞬で職場放棄され
シフトに二つ穴が開き

洗濯機が運ぶ仕事を両手両肩に抱え

睫毛に靴下をぶら下げ

つま先で素麺をかき集め

床擦れに蝕まれつつ

立ち尽くし日が暮れ

心から崩れ落ち
香になろうと這いずり

何年も抱き続けてくれた両親の腕と
息子よりも小さかった背中だとか

消費期限切れの私をわざわざ訪ね
改ざんしてくれた悪友や

この世界につなぎ止めてくれた恋人の

偉大さを知る
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