絵本/石瀬琳々
 
黒い道がのびている
静かな轍(わだち)が寄りそうように走り
道の上には白い雪が
粉砂糖のようにやさしく降り置いて


灰色の空には切り裂く翼もなく
肌を刺す冷たい空気ばかりが動く
ぴんと張りつめている
心も凍った景色に同化して
立木は沈黙したまま
規則正しい線を描き続ける
視線はとらえる
静止した雪景のむこうにーーー


赤い家が建っている
窓を閉ざし厳かなカーテンにふちどられ
家の前には黒い道が
誘うようにどこまでもどこまでものびている


私は本を閉じた



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