きらくのはじまり/小原あき
 
「気楽」を抱き締めた
精一杯に、一生懸命に
「矛盾」が貼りついてきたので
えいや、と払い落としてごみ袋に入れる
これはもえるごみだろうか、と
湿った「疑い」が落ちてきたので
とりあえず床を拭いた
思いがけず綺麗になった床を
「満足」を噛みながら眺める
空気を入れて膨らませたら
どこまでも膨らんだ
もしかしたら、空を飛べるかもしれない、と
風船の中は「期待」だらけになり
屋根をあっという間にぶち抜いた
高いところまで来て
「期待」が「不安」に変わりはじめた
風船は萎んで
あっという間に地面に転んだ
「幸い」がクッションになって
命長らえた「喜び」を大事に埋めた
[次のページ]
戻る   Point(18)