こだま 手のひら/木立 悟
涙をぬぐう手の甲ごしに
おまえが見つめた火の生きものは
空に焦がれて死にかけていた
朝は目のようにゆうるり動き
世界は風のなかの風にたなびく
こすり
火を生み
その火をこすり
こすりつづけ こすりつづける
火は変わらない
火は
何も変わらない
雪の降りおりるを 目の奥ぞ招ぶ
深きを 永きを ひとひらの堕つ
こがねに鳴る音
水や樹を染め
曲がる流れ
軋む流れ
ほどきつづけていた手を休め
つむぎはじめてすぐの生きもの
みなもとへ還る双つの羽
おまえの名前を 指で指に書く
燃えるように ひと文字が点く
手のひらに溶け
流れる雪の傾きのさき
緑と金の海があった
咽と胸で異なる鼓動
ひとときひとときにこだましていた
戻る 編 削 Point(4)