帰還/渡邉建志
線路を歩いた
草がたくさん生えていた
誰もいなかった
ずっと前に廃線になったのだ
線路沿いに坂を上っていくと
車両が置き晒されていた
子供が廊下を走っていた
もう少し歩いていくと
町を見晴らす高台の公園があって
地球儀のジャングルジムが回っていた
誰が回して行ったんだろうか
町を見下ろす銅像があって
足元のベンチで恋人たちがくちづけあっていた
5分ぐらい見ていたけれどずっとくちづけあったままだったので
彼らも銅像だったのかもしれない
さらに歩いていくと細い山道になった
右を見れば深い川が速く流れていた
左は崖で5メートルほど下にくろい土が見えた
落ちたら死ぬなと思った
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