イノセント/ホロウ・シカエルボク
最後の試みがか弱い息になって口から漏れたとき
運命の爪に掛けられたように君が立ち上がる
何も出来なかったけれど手は尽くしてしまった
カップの中の飲物は待ち疲れていた
暗く変わり始めた窓の外には見えるものはもう無くて
玄関のドアに真っ直ぐに歩く
どこか呆然とした君の背中と
それを見送る
どこか呆然とした
すべての眠りを待つ僕の
ふたつの目だけがくっきりと映し取られていた
そんなものだ
そこに映ったことだけが
いまこのとき唯一はっきりとした出来事なのだ
僕も君もいらない
枯葉も
ドアが開いたとき
猛獣のように雪崩れ込んできた強い風も
呆然とした
呆然とした
呆然とした
――ふたつの目、だけが。
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